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□ Your warmth


液晶画面に映る京一の名前。
もう何度目かも忘れてしまうほど、らしくもなく電話を掛けていた。
嫌な予感がしていた。
心の奥がざわざわと音を立て、風が吹き過ぎるような感覚。
最初は別に何でもないと思っていた。ただ疲れが溜まっているだけだと。思い過ごしだと。
けれども、いくら時間が経ってもそのざわめき立つ気持の理由など、見つけることもできず、思わず家を飛び出していた。
電話に出ないから・・・・・。
それだけではなくて・・・・・・。


ハンドルを握る掌に汗が滲む。
何もなければいい。
何もなければ、それだけでいい。
握りしめられるように心臓が軋み音を立てる。
胸を打つ鼓動が、まるで耳元で鳴り響いているようだった。
どうしてこんなに不安に感じるんだ。
初めの予感は、些細なことだった。普段から使っていた時計が動かなくなった事。
別にそれ自体は何でも無かった。電池でも切れたのだろうと。
本当に嫌な予感がしたのは、小さな鈴が転がり落ちたことだった。
前の部屋から京一が引っ越していった時に忘れていた猫の鈴。それを拾って持って帰り、机の上に置いておいた。
風も吹き込まない部屋で、鈴が小さな音をたてたとき。
小さく胸が鼓動を打った。
ドクン。・・・・・・そう一つだけ。
何も無ければそれでいい。
それを確認できれば。
胸騒ぎの中、走り続けた道をどう走ってきたのか、覚えてはいなかった。


マンションの前。
京一の黒いランエボを確認した涼介は、大きく息を吐いた。
とりあえず、事故を起こしてはいない。
間違いなく何かあるとすれば、一番大きなものは事故。車が無傷で止まっていると言うことは事故ではない・・・・・・。

エレベーターに乗り込み京一の部屋を目指す間、カウントしていく数字が余りにも遅く感じた。
閉所が苦手というわけではないのに、無機質な箱が息苦しさを煽ってくる。
見つめれば見つめるほど、遅く感じるカウントに拳を握りしめた手をドアに向かって強く打ち付けた。
苛立つ感情。いつもの平常心が保てない。
心の均等を、どこで保っていいのか分からなかった。

あらかじめポケットから取りだして置いたカギを鍵穴に差し込み、ドアを開けた。
出迎えてくれるはずの猫の姿もなく、部屋は静まりかえっていた。
「京一ッ」
珍しく大きな声が、飾り気のない部屋に響いた。
何処に行ったんだ。
寝室へと入っていけば、脱ぎ捨てられたスーツとシャツ。
テーブルの上には煙草と電話。
いつもと変わらない景色が広がっていた。
「京一」
けれども、その部屋の主である、京一の姿だけがない。
そう、思いこんでいた。

「何やってるんだ、涼介」
エッ。
背中から聞こえてくる低い艶やかな声。
足下にはずぶ濡れの猫が二匹、絡みつくように寄ってきていた。
「涼介、悪い。こいつら拭いておいてくれ」
振り返った涼介に投げ渡されたバスタオル。
それを渡した京一は、冷蔵庫に向かいペットボトルを取り出していた。
「京一。お前何でもないのか」
「はぁ?何言ってるんだ」
「いや、だから」
「だからって、お前の方がどうした。いきなり来るのはいつもの事だが」
ペットボトルを煽るように傾ける京一。
その姿に、何も変化は見えなかった。
別に、これと言って気に掛かることは何も。
それじゃぁ・・・・・・。
「会社、首にでもなったのか」
「はぁ?何言い出すんだ」
「けれど・・・・・・」
「けれども何も、会社も首にならずにいいように使われて忙しいぐらいだ」
「・・・・・・そうか」
一気に見舞われる脱力感。
力の抜けた身体をソファーまで運び、大きく吐いた溜息と共に腰を深く沈めた。





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【頂きもの】

▼ini D


▽文字

Your warmth
(京涼)  1 
  2   3 

僕の初恋・番外編(拓慎)
 1 
  2   +α 

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▽漫画

幸玄(1頁)

▼指輪



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