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□ Your warmth 2


「で、どうしたんだ?」
猫をバスタオルで包みその身体を丁寧に拭きながら涼介の前に座る京一。
何かを考えているのか、空を見つめる涼介からなかなか答えを聞くことは出来なかった。
大きく投げ出された京一の左足。
それに涼介が気がつくまで、静かな時間が続いた。
涼介の突然の訪問を、京一は不思議にも思わなかった。
突然、涼介が来るのはいつもの事だ。
何かあれば言い出す。
文句でも恨み言でも何でも聞いてやる。
それを涼介が言い出すまでは、時間が掛かるだろう。
周りの人間から一角離れた場所に存在する涼介。
それ故、自分との葛藤がある。そこから、言葉を探し出すには時間が掛かるかも知れない。
長期戦を覚悟した京一は、時間が過ぎれば・・・・・と、脱ぎ捨てたスーツを片づけるため、寝室へと向かった。
僅かに痛む、左足を引きづりながら。

「京一、左足」
京一の不自然な歩き方に気がついたのか、やっと声を発した涼介。
スーツを片づけながら京一は、昨日の夜のことを話した。
「左足か。捻挫だと思う」
「捻挫?」
「ああ、昨日チームの若い奴が、下っている途中で突っ込んでくれて、車を上げていて挟んだらしい。朝方見たら腫れ上がってるわ、車の運転すら出来ないからな」
そう、京一が捻挫の理由を話すと、涼介の口から笑い声が洩れた。
「なんだ、捻挫か」
「何だとはどういう事だ。涼介、お前一応、医者になる身だろう」
「いや、心配するほどでも・・・・・・」
心配?
涼介がそこまで言いかけ、ハッとしたように口を接ぐんだ。
「誰の心配をしたんだ。涼介」
「聞き間違えだ。めでたい頭をしているからな」
「誰がめでたい頭だ」
「お前だ。それに風呂上がり、そんな格好をしていたら風邪を引くぞ」
立ち上がった涼介はそう言うと、京一の首からタオルを取り上げ、未だ水滴の残る京一の身体を拭き始めた。
「オイ」
京一の言葉など無視するように、その身体を拭き続ける涼介。
その度に、涼介の指や手が触れた場所から熱さが込み上げてきた。
それでも、沸き起こる欲望を涼介にぶつける前に聞いておきたい涼介が来た理由を、先に問いつめる事を優先した。
「オイ、心配するってのはなんだ」
拭き続ける手を掴み上げ、まだ水分の残る身体に涼介を抱きしめた。
目眩を感じる程その腕に抱きしめられた涼介。
いきなりの事に抗いを見せる涼介。
抵抗する涼介ごときいつもの京一にとってはさほど利くものでも無かった。しかし、左足は立っているのがやっとの状態。
直後に走った左足の激痛と共に、その大きな体のバランスを失い欠けた。
「京一ッ」
背中まで伸ばされた涼介の腕。
背中を支えるような引っ張られた感覚と共に、直ぐに伸ばされた京一の腕がカウンターにまで伸びた。
なんとかバランスを取り戻した身体。ズキズキした痛みが残る足を引きずり、涼介の腕に引き寄せされるように、その身体を起きあがらせた。
「心配させるな、余り」
「じゃあ、答えろ。・・・・・・どうして、ここまできた」
「・・・・・・車で」
車?
「!・・・・・・違うだろ、聞いていることが」
誤魔化すような答えにムキになる京一。しかし、背中まで回された手がその力を強めるのを感じると、荒げた声を静かにし、もう一度尋ねた。
「何を思ってここまで来た」
「・・・・・・事故でも起こしたかと思った」
「事故?どうして」
「なんとなく」
「・・・・・・」
「時計が動かなくなって・・・・・机の上に置いてあった鈴が・・・転がり落ちたとき、嫌な予感がした」
「それで・・・・・・オレに何か起こったと思って来たって言うのか」
「何もなくてガッカリした」
そういって小さく笑う涼介。
しかし、支える涼介の手は震えていた。小刻みに震える手の振動が、ここまで来る間の涼介の動揺を表しているのか、その震えを止めるために京一はカウンターから手を離すと、再び涼介の背中へと腕を回した。
「何もなっちゃいねえ。事故てもいなければ、体調を崩したわけでもない。もちろん、会社をクビになったわけでも」
「それでも、ケガをしているだろう」
「たいしたことない」
涼介を安心させるため。そう思い腕に力を込め寄せていった唇。
その顔が涼介の手に包まれ、涼介自ら京一の唇に唇を寄せていった。
触れた唇から伝わる熱さ。
初めは触れていただけの唇が、その舌を滑り込ませ涼介の全てを注ぎ込んできた。


涼介の唇が与える刺激に、京一の雄は次第に覚醒し始めた。
初めは涼介を落ち着かせる為、涼介の震えを止めるため。口づけにそれだけの効力がある、
そう思って傾けた顔だった。
しっとりと潤い始めた唇。涼介からの口づけに京一自身、酔ってしまいそうだった。
この間、自分の欲望に応え欲しいという言葉を口にした涼介が、自ら頬を包み込み口づけをしてくるなど考えてもみなかった。
全てを語る事無くとも、唇が伝えてくれる想い。
涼介がどれほど心配してここまで辿り着いたかを、教えてくれるようだった。
洩れ出す息に堪りかねたように唇を離す涼介。伏せていた瞼をゆっくりと開けると、額を寄せる涼介の顔がそこにあった。
「・・・・・・本当に、心配したんだ」
「涼介・・・・・・。何もおこっちゃいねえ。もう、心配することはないだろ」
その言葉に軽く頷いた涼介。
涼介がこんなに自分の事を心配するとは思っていなかった。
昨日の今日。電話でも掛ければ、文句をいいつつもここへ来るとは思っていた。その上、心配を掛けることも。
心配を掛ければ掛けただけ、涼介の疲れも溜まる。だから、あえて口にするのをやめてたって言うのに・・・・・・。
涼介の周りに、オレは生きてるんだな。
「足、痛むか」
「まあな」
「ベッドに入って休んでろ、あとはオレが」
そう言って落ちているタオルを拾い上げた涼介。
けれども、もう離す気になんてなれなかった。
まだ濡れている唇は涼介の温もりを残し、抱き留められた背中は、その痺れを残している。
「まだだ」
涼介の肩に手を掛けた瞬間、京一の身体はバランスを取れず大きく揺れた。
「危ないだろッ」
そのまま支える体勢に入った涼介に寄りかかるように抱きしめた。
「ベッドにぐらい自分で行け」
「煽るだけ煽っておいてそれで終わりなのか」
「誰が煽ったと言うんだ」
「好きな相手から、あれだけの口づけをされて冷静でいられると思うか」
「けが人ならわきまえろ」
「あのまま涼介が続けてくれても、構わなかった」
くくっと笑いを含めて言った京一。
さすがに、この足では抱いたとしても涼介どころか自分すら支えられるか分からない。
こんな挑発に涼介が乗るとも思えず、背中に回した手から涼介を解放した。
「冗談だ・・・・・・」
何も言わない涼介から離れた京一は、そのまま寝室へと足を運んでいった。
ケガの功名。
せめて、涼介が会いに来たことだけでも今日は感謝しなくてはいけない。
心配した。そう言った涼介の顔が、頭から離れなかった。





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【頂きもの】

▼ini D


▽文字

Your warmth
(京涼)  1 
  2   3 

僕の初恋・番外編(拓慎)
 1 
  2   +α 

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▽漫画

幸玄(1頁)

▼指輪



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